M1 MacとWindows

M1チップとは

AppleシリコンM1チップとはアップル社が開発したSoCです。

SoC(System On a Chip)とはCPU(演算装置)、GPU(画像用演算装置)、メモリなど複数の機能が実装された半導体チップです。

このM1チップの大きな特徴は2点です。

  • ARMアーキテクチャ
  • ユニファイドメモリ

ARMアーキテクチャ

ARMとはCPUアーキテクチャ(構造)の1つです。

ここ15年ほど、パソコンのためのCPUアーキテクチャはインテル(AMDも含む)が主流でした。

MacもWindowsもです。

昔から消費電力に対する性能はインテルよりARMのほうが高いものの、以前のARMの性能はインテルには及びませんでした。

それがARMの性能向上によりインテルと変わらなくなってきたのです。

同じ性能ならインテルより消費電力の低いARMにすればいい、と誰もが考えますが簡単ではありません。

ARMに移行すると基本的にはインテル向けに開発されたソフトウエアが使えなくなるためです(AdobeやマイクロソフトOfficeなどのメジャーなソフトはARMに対応しました)。

にもかわからず、Macは全面的にARMアーキテクチャに移行しようとしています。

WindowsはMacより早く移行しようとしていました(詳細は後述)。

たとえソフトウエアの互換性の問題があってもARMへの移行はMacでもWindowsでも規定路線ということなのでしょう。

ユニファイドメモリ

M1チップのユニファイドメモリとは「バス」を介さずに共有されるメモリです(M1チップ以外ではGPU専用メモリを用意せずメインメモリをCPUとGPUで共有することをユニファイドメモリと呼ぶことがあります)。

バスとはCPUやGPUなどの「装置」が同時にメモリにアクセスしようとしても衝突がおきないように調停するための仕組みです。

バスによる調停とは例えば「今、CPUがアクセス中だからGPUはちょっと待ってね」みたいな単純に待ってもらうための仕組みで当然、調停すればするほど遅くなります。

パソコンを構成する複数の装置の中心にはこのバスがあり、装置間のデータの受け渡しを行っています。

とくにパソコンでは画面描画のための膨大なデータがCPU、メモリ、GPU間でバスを介して転送されています。

バスによって調停されながらの膨大なデータ転送は当然、パフォーマンスの足を引っ張っていました。

M1チップではバスを介さずにメモリを共有するため、パフォーマンスが大幅に向上します(その代わり装置間で衝突しないようなメモリアクセスをする必要がありますが)。

それによって物理メモリ以上に仮想記憶を使っても極端に速度が落ちなくなっています。

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WindowsはMacより早くARMに移行しようとしたが……

前述のようにWindowsはMacより早くARMへの移行にチャレンジしています。

そもそも以下のようなパソコン向け以外のWindowsには大昔からARM版がありました(ARM版どころかMIPS版もありました)。

  • Windows Phone
  • Windows Mobile
  • Windows Embedded
  • Windows CE

パソコン向けではないため通常のWindowsアプリをそのまま使うという要求はなく、アプリの互換性問題はありませんでした。

これらはすべて絶滅し、現在も生き残っているものはありません。

マイクロソフトのSurface Duo(2画面の折りたたみ式スマホ)でもWindows Phoneではなく、Googleが開発したAndroidを採用するというありさまです……

Windows RT

では、パソコン向けのARM版Windowsはというと、2012年にリリースされた「Windows RT」がありました。

マイクロソフトのSurfaceの初代機はそのWindows RTを搭載したSurface RTです。パソコンメーカー各社もWindows RT端末を発売しました。

しかし、ARMアーキテクチャにもかかわらず、稼働時間はインテルアーキテクチャのWindowsパソコンと変わリませんでした。

しかも、使えるのはWindowsストアのARM版アプリのみで既存のWindowsアプリはまったく動かないという「ぶっ飛んだ仕様」でした。

さすがにパソコン向けのWindowsで既存のアプリが使えないというのはまったく受け入れられず、Windows RTも絶滅の道をたどりました。

Surface Pro X

Surface Pro XとはARM版のWindows(Windows RTやCEのようなOS名はないようです)を搭載したパソコンです。

WOA(Windows On ARM)の「Dynamic Binary Translator」によって通常の(インテル向けの)WindowsアプリをARM用に変換しながら動作させることができます。

ただし現在、Dynamic Binary Translatorで変換できるのは32bitアプリだけで64bitアプリ対応は現在開発中です。

ARMを採用したことで稼働時間も「ちょっとだけ」長く(M1 Macにはまったくかないません)、スマホのようなLTE常時接続も実現しています。

しかし、マイクロソフトのカスタムチップである「Microsoft SQ2」を搭載してはいるもののM1チップのユニファイドメモリのような仕組みはないようで、M1 Macのような大幅なパフォーマンス向上は実現していません。

そのため、「若干の稼働時間アップと常時LTE接続のためだけに(少なくとも今は)64bitアプリが使えないARM版のWindowsを選択する意味があるのか?」となってしまいます。

そんなわけでWindowsのARM移行は茨の道でした。とても成功したとは言えないでしょう。

それに対し、ARMのM1 Macはパフォーマンスと駆動時間だけでも選択する価値があるのではないでしょうか。

Parallels Desktop + ARM版Windows

Parallels DesktopとはMacでWindowsを動かすための仮想化ソフトです。

2021年4月にParallels Desktop 16はM1 Macに正式対応し、ARM版のWindowsを実行できるようになりました。

しかし、ARM版のWindowsはインテル版のWindowsのように一般販売されていません。

PCメーカー向けにはOEMライセンスされていてARM版Windowsを搭載したパソコンが発売されています。

レノボ・ジャパン(同)
53,770円〜
ARM版Windows搭載

将来的にはParallels社向けにOEMライセンスされるか一般向けに販売されるかもしれませんが、現時点ではWindows Insider PreviewのARM版Windowsを利用するしかありません。

Windows Insider Previewとはマイクロソフトが試験的にソフトウエアを公開するためのプログラムです。

現在は日本語化できない?

Insider Previewで提供されているWindows 10は日本語の「言語パック」がインストールされておらず英語UIになっています。

本来ならWindowsの設定画面から日本語の言語パックをインストールすることで、様々な言語に対応できます。

しかし、現在提供されているInsider Previewでは日本語の言語パックのインストールはできるのですが、完全な日本語対応はできません。

Insider Previewには以下の3つの「チャネル」があり、チャネルによって適用されるWindows Updateが異なります。

Devチャネル 開発早期段階のもので不安定。
技術力のあるユーザー向け。
ベータチャネル 年2回の機能アップデートのプレビュー版
リリースプレビューチャネル 正式リリース直前のもの

以前にインストールしたInsider Previewでは「Devチャネル」のWindows Updateで日本語言語パックの問題が解決されていました。

ところが現在、Insider Previewを新規インストールするとどういうわけかチャネルがリリースプレビューに固定されるようです。

そして、少なくともこの記事の更新時点ではリリースプレビューチャネルに日本語の問題を解決するWindows Updateが適用されません。

そのため、Insider Previewを新規インストールするとまともに日本語化できません。

Parallels Inc.
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Windows Server VPS

Windows Server VPSとはクラウドでWindowsを提供するサービスです。

M1 MacからWindows Server VPSにリモートデスクトップ接続することでクラウドのWindowsがまるでMacで動いているように使えます。

クラウドのWindowsの画面がMacに転送され、Macのマウス/キーボード操作がWindowsに転送されるという仕組みのため、Mac上でWindowsを動かすのに比べていくつものメリットがあります。

  • Macのリソースをほとんど消費しない。
  • 会社でも自宅でも外出先でも全く同じWindows環境を使える。
  • Windowsのライセンスが不要(Windows Server VPSの利用料に含まれる)。
  • 24時間常時稼働。

現状ではこのWindows Server VPSがM1 MacでWindowsを使う最有力候補です

2週間無料

Windows 365

Windows 365とはクラウドのWindows 10を提供するサービスです。

Windows Server VPSと同様、M1 MacからリモートデスクトップすることでWindowsが利用できます。

ただし、法人向けサービスであり、料金はWindows Server VPSよりかなりお高いです。

Cross Over

Cross OverとはWindowsアプリに互換レイヤーを提供する有料ソフトです。

Mac版、Chromebook版、Linux版が提供されていますが、Chromebook版(CrossOver Chrome OS)では対象のChromebookをインテルCPU搭載のものに限定しています。

ARM CPUのChromebookでインテルCPUのWindowsアプリを動かすのは負荷が大きいためだと思いますが、Mac版ではARMのM1 Macに対応しています。

ただし、Cross OverはParallels Desktopなどの仮想化ソフトと違い、本物のWindows上でWindowsアプリを動かすわけではないため、動作するアプリは限られます。

Boot Camp + ARM版Windows

インテルMacにはBoot CampというMacにWindowsをインストールする仕組みがあります。

しかし、M1 MacではBoot Campを使えません。

インテルMacにWindowsがインストールできるのはハードウエアがWindows PCとまったく同じだからです。

M1 Macはそうではありませんので、Boot Campが使えないのは当然です。

前述の通り、ARM版Windowsが一般販売されていないという問題もあります。

さらにM1 MacとARM版Windows PCでブートプロセスが同じなのか?、という疑問もあります。

Windows 11はMacでは動作しない

2021年中に次世代WindowsであるWindows 11がリリースされる予定です。

Windows 11では古いPCが切り捨てられており、その1つがTPM 2.0を搭載していないPCです。

TPM(Trusted Platform Module)とはセキュリティ処理を行うチップで、Macでは有効にされていません。

そのため、たとえインテルMacであってもWindows 11は使えません。

マイクロソフトがMacのためにTPMのシステム要件を緩和することはちょっとなさそうです。

そして、M1チップに移行中のアップルがWindows 11のためにTPM 2.0に対応する可能性も高くないのでは……

これによって「インテルMacならWindowsが動く」も過去の話となるかもしれません。

macOSを使わないならSurface Laptopでも

MacBookを購入しても使うのはBoot CampのWindowsだけでmacOSは使わない、という人もいます。

昔はMacBookのような高品質のWindowsノートがあまりなかったせいもあるかもしれません。

でも今はSurface Laptopのような品質のWindowsノートがあります。

マイクロソフトストア
84,480円〜
9/30(木) 10:59までの期間限定
Windows 11への無料アップグレード

Surface LaptopにはWindowsのライセンスはもちろん、Office Home and Business 2019も付属しています。まあ、WindowsもOfficeもSurfaceと同じマイクロソフトが開発していますから社内から安く調達できるのでしょう。

そして何よりWindows Insider PreviewのARM版などではなく、正式リリースされているインテル版のWindowsが使える高品質のPCという点です。

macOSを使わないのであればMacのARMへの移行はそういった選択肢を考えるいい機会かもしれません。

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